自然の価値 3

「自然は、有用な種、有害な種、そのどちらでもない種、というように、ヒトの都合でラベルを貼られる種の乱雑な寄せ集めではない」


「生態系は構成要素それぞれが特異的にかかわり合う複雑なシステムであり、それぞれの種が全体に寄与する要素として重要である」


「ヒトも他の生物も同じように進化の産物であり、決して神を形取った像ではないとしたら、ヒトと同じようにすべての種が固有の存在価値をもっているはずである」


・・・などの表現に、その考え方の特徴が表れています。


ムーアは宗教的な意味での種の平等を説きましたが、レオポルドは生態的な意味での種の平等を説いたのです。


ピンコットにあってはヒトと自然は対立するものであったが、レオポルドはヒトも他の種も同じ地球を構成するチームの一員とみています。


そして、ヒトにはもちろん自然を利用したり管理したりする権利があるが、他の種や生態系全体の固有の価値を認めたうえでその権利を行使する責任がある、と考えるのです。


保全生物学のリーダー格の研究者によって、野生生物の危機の現状を広く社会に訴えるためにつくられた「生物多様性」の概念・・・


これは、今、ヒトが自然に認めているこれらすべての倫理観に基づく価値を担う実体です。


自然の価値 2

自然は、宗教的なもの精神的なものも含め、ヒトの何らかの役に立つから価値があると考えます。


それに対して、進化的生態的固有倫理では、ヒトの利用のための価値という範疇には納まらない自然の価値を重んじています。


その価値観は、ダーウィンの進化論に兆すものです。


生態学や進化学の科学としての発展に伴って、この価値観は大きく成長しました。


ヒトの存在とはかかわりなく、この地球上には多様な生物が進化しました。


それには、自然選択による適応進化が大きな役割を果たし、生物の進化と多様化は地球の歴史をきわめて独自なものとしています。


そのかけがえのない地球の歴史、生命の歴史、進化の歴史を尊ぶというのがこの倫理観です。


A・レオポルドの著作は、この第三の倫理観を意識化するうえで大いに役立ちました。

自然の価値

資源としての自然の価値・・・


つまり、利用できる自然の価値のなかには、美学的な価値や宗教的な価値も含まれます。


ヒトは、その身体も魂も自然をよりどころにし、それを資源として生きています。


この倫理では、ヒトを中心にして考えられる、あらゆる資源としての自然の価値を重視します。


したがって、その実践的な目標においては、ミューアたちの意見も尊重し、ある程度の面積については原生的な自然の保護も考慮しました。


林業や牧場の経営主体など、一部の人々の利潤追求によって自然が過度に搾取され変質してしまった過去の歴史を憂い、自然資源は、政府によって所有され、管理される必要があるとも主張しました。


その意見はミューアの意見とともに、広大な面積の国立公園の設置など、実際に政策に取り入れられました。


ロマン主義的超絶主義保護倫理、資源保全倫理のいずれもが、人間中心の考え方です。


そこで強調されている自然の価値は利用価値です。

地中海世界の成りたち 9

ギリシア人はフェニキア人と対抗しながら、地中海と黒海のほぼ全域にわたって活動しました。


その活躍ぶりは今の地図上にもギリシア語起源の都市名をあちらこちらに留めていることからも推測できるでしょう。


ここに、新参のギリシア人が、フェニキア人と地中海世界を分け持つ勢力に成長しました。


地中海世界のこのような形勢に大きな一石を投じたのは、ペルシア帝国の発展でした。


この国はペルシア湾東岸に近いペルシス(現在のファールス)地方に台頭したイラン系のペルシア人が建てたものです。


始祖の名にちなんでアケメネス朝といいます。


アッシリア帝国の崩壊後に覇を競ったメディア、リュディア、新バビロニア(カルデア)、エジプトの四大国を次々に倒していきます。


BC6世紀末のダリウス1世(大王)のときには、西は地中海の東岸地方から東はアム川、インダス川のほとりに及ぶ一大帝国にのしあがりました。


「旅の守護神」

沖縄ツアーに行ったときに、面白い話を聞きました。


昔、旅に出る人たちは、「姉妹」の「うなじ」の髪の毛を守り袋に入れ、或いはその手巾を貰って旅立つ風習がつくられたのです。


旅に出る命令は、一年ほど前から出されたので、その家では、板で船形をつくって竹竿に吊し、空高くかかげました。


これを風旗とも、信旗ともいったそうです。


航海の安全を祈願する意味もふくまれて、ぶじ旅を終え、船が帰ってくるまでこの船形はかかげられました。


それと同時に、普天間権現をはじめ、方方の神々に祈願をかけて、航路の安全を祈りました。


おみなりの手巾 (姉妹の手拭は)


まぼるかみだいもの (わが守護神なれば)


引きまわち給われ (我を守護し給え)


大和までも (日本に行ってまでも)


・・・と旅立ちのお祝の歌にもうたわれたのです。

「自由な労働」とは?

自由な労働とは何でしょうか。


それは果たして可能であるのでしょうか。


労働を自由なとみなす思想の潮流が念頭においていたのは、常に工業化以前の、いえもう少し厳密にいえば大量生産Tomcat的システム以前の労働の姿でした。


工程の精神的力能が人間の手にあった時代の労働の姿でした。


そのことの意味は決定的に重要です。


労働には常に二重の逆方向を向いた過程が重なっています。


ひとつは自己の対象化、マルクスが書いたように自らの労働を、能力を、労働という行為によって、対象の中へ、労働生産物の中へ、移しかえる過程です。


その時人は、労働の過程もその結果も含めて、「これはおれの仕事だ」という実感をもつのです。


もうひとつは、その労働の中で、対象との格闘をとおして人が、対象の性質、工程についてのさまざまな経験や知識を獲得し、仕事の能力として自らの中に蓄積してゆく過程です。


それは個人の感覚としては仕事の能力、客観的な工程との対比では、「工程の精神的力能」と呼ばれてしかるべきものです。

地中海世界の成りたち 8

アテネとスパルタに代表される何百というポリスは、それぞれに特色を異にするものの、いずれも政治的自由と経済的自給自足を建前としていました。


しかしポリスの基盤となった狭小な平野では、ただでさえ地味が悪いものでした。


そのうえ、水利にも恵まれず、穀物生産力は低かったのです。


人口が増えるにしたがって、多くのポリスでは食料さえ不足してしまいます。


BC8世紀頃から、ギリシア人がさかんに海上貿易と植民活動に乗りだしたのは、このような事情に基づくものだったのです。


そのさいの商品の生産に、食料作りに、また船の漕ぎ手として使用された奴隷は、社会の底辺におかれました。


その数や地位などにも所によって違いがあります。

地中海世界の成りたち 7

アーリア人の1分枝としてギリシア人がバルカン半島を南下しはじめたのはBC2000年頃のことでした。


彼らの最初の波はBC1400年頃にクレタ島に達しました。


彼らはクレタ海上帝国を滅ぼすとともに、その文化遺産を呑みこんで、ギリシア本土のミケーネ、ティリンスなどを中心にミケーネ文化を築きます。


名高いホメロスの叙事詩の背景はこの時期に属します。


ついでBC1200年頃、第2波の侵入によってエーゲ海一帯は再び混乱におちいります。


この混乱が収まったとき、ギリシア本土、エーゲ海の島々、小アジアの沿岸などに点々とポリス(ギリシァ人の都市国家)が輝きだすのです。


ポリスは航路、つまり「線」で結ばれた「点」にほかなりません。


こうして、地中海世界には新しい時代の到来を告げるきざしが現れたのです。

地中海世界の成りたち 6

フェニキア人というのはギリシア人による呼び名です。


セム系のカナーン人を根幹とする混成民族を指します。


彼らはめぐまれた立場を十分に生かしつつ、ウガリト(ラス・シャムラ)、ビブロス、ベリトス(ベイルート)、シドン、テュロスなどの都市を作って地中海に雄飛しました。


こうして、「肥沃な三日月地帯」のもつ東西の架け橋としての機能を地中海上に延長したことになります。


彼らが諸国の文字を学び、アルファベットを作り、それをギリシア人に伝えたことに、その役割が端的に示されているではないでしょうか。


BC14世紀から13世紀にかけて束地中海を吹きあれたギリシア人、プリスティア人などの民族移動の嵐によってクレタの海上権が衰えると、フェニキア人の海上活動はいよいよ高まり、その航跡は西地中海にも及びます。


チュニジアの北端を占めるカルタゴ市をはじめ、シチリア、サルジニアなどの島々やイベリア半島の沿岸に多数の植民市が建設されました。


地中海は一時、フェニキアのひとり舞台と化したように見えますが、やがて力強いライバルが出現します。


地中海世界の成りたち 5

限られた水を用いて営まれるオアシスの農耕生活は、耕地をやたらに広げることはできません。


耕地と人口のバランスは早晩くずれる運命にあります。


また個々のオアシス内部の生産物も偏りぎみで、生活必需品の多くを他に求めねばならなかったのです。


そこで早くから交易が起こります。


やがてそれは大規模な隊商貿易にまで発展しました。


「肥沃な三日月地帯」の諸オアシスは、互いに隊商路で珠数つなぎにされて、ペルシア湾と地中海との間の架け橋と化します。


フェニキアはレバノン山脈と地中海とに挾まれた細長い沿海地にすぎません。


しかし、このオアシス橋の橋頭墜であり、同時に、メソポタミア、エジプト、クレタの三大文化圏の交点にあたっていました。

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